島田の茶畑から抹茶の魅力を発信 週末だけの抹茶カフェ「MATCHA MORE」
日本有数の茶どころとして知られる静岡県。そのほとんどが煎茶という中にあって、有機栽培で抹茶作りにチャレンジしている生産者がいます。「育てたものを作り手が提供する」茶畑の中のカフェにおじゃましてきました。
島田市街から県道64号を川根方面へ。新鍋島トンネルを抜けてすぐ「鍋島」という看板が目に入ります。そのわきの山道を上り、矢印通りに進んだ先、茶畑の中にあるのが抹茶カフェ「MATCHA MORE(マッチャモア)」。
もともと地元の農家の人たちが共同で使っていたお茶工場をリノベーションした、地元の抹茶を味わえるカフェです。
このカフェをプロデュースするのは島田で抹茶作りを手がける若手生産者たち。Matcha Organic Japan 株式会社の代表、田村善之さんは「お茶が育った場所で、お茶が育った水を使い、お茶の作り手が提供するカフェです」と説明します。
メンバーのほとんどが煎茶を作っていた生産者。きっかけは田村さんが抹茶作りに興味を持ったことでした。
「海外の展示会に参加した際、外国での抹茶人気に驚いたんです。日本ではお茶といえば煎茶ですが、海外では圧倒的に抹茶。日本でも若者のお茶離れが叫ばれているけれど、おしゃれなカフェの抹茶ラテならみんな買って飲んでいる。思い切って抹茶に挑戦するのもいいんじゃないかと」
生産者仲間に声をかけ、5人でスタート。煎茶と抹茶では向いている品種や手のかけ方、加工の方法も異なるため、試行錯誤の日々だったといいます。
「煎茶はドラムの中で揉みながら熱風で乾燥させますが、抹茶はレンガの遠赤外線効果を生かして下からあぶる感じ。機械が全然違うんです」
カフェのオープンは2019年4月。
「ワインの生産地では、ぶどう畑の中ででき立てのワインを味わいながら、生産者の話を聞いたりしているでしょう。そんなワイナリーのようなことを、茶畑の中でもやってみたい。この立地ならできるんじゃないかと思って」
MATCHAMOREのメニューで一番人気は「本気のオーガニック抹茶ラテ」。ふわふわのミルクと抹茶のほんのりほろ苦さがマッチして優しい味わいです。「抹茶レモンソーダ」は色合いも酸味もさわやかでこれからの季節にぴったり。
いずれもオーダーを受けてから抹茶を立ててくれます。
抹茶チョコレートフォンデュは、季節のフルーツやマシュマロを、抹茶とホワイトチョコのソースでいただくスタイル。残ったソースはアイスクリームにかけて味わえるのもうれしい!
週末限定のオープンにも関わらず、島田市内外から足を運ぶ人も少しずつ増えてきました。
「もともと高齢化が進み人口も減っていた鍋島地区に、こうして人が来てくれるのはうれしいですね」と田村さん。最近では海外から生産者に会いたいと見学に訪れる人もいるのだそう。
「SNSなどで探して、初めてやって来た日本が、島田にある鍋島の集落という人もいて、素晴らしいと絶賛して帰っていく。これは本当にすごいことだし、抹茶と農業の可能性を感じています」
この春には新しく工場も完成予定。農業体験なども含め、新しいコンテンツをどんどん発信していきたい、と今後の展開を話してくれました。
「抹茶のクオリティを上げることももちろんですが、このプロジェクトが農業に携わる人だったり、地域のブランド作りだったり、そういう方面にも力になれるといいなと考えています。農業ってかっこいいんだな、静岡で面白そうなことやっているな、と伝えていきたいですね」
静岡ではまだ少ない抹茶の魅力に魅せられ、日本のみならず世界へ発信しようとしている若い生産者の皆さん。カフェのカウンター席で、おいしい抹茶メニューをいただきながら、その取り組みについて聞いてみるのもいいかもしれません。
MATCHA MORE
島田市身成1476‐2(旧鍋島茶農協)
営業/毎週土日 午前11時から午後4時
TEL 080-1183-3419