熱海の新しいワークスタイル拠点。コワーキングスペース「naedoco(ナエドコ)」
働き方改革が叫ばれる近年、リモートワークや二拠点生活、複業など、さまざまなワークスタイルを実践する人が増えています。風光明媚で温泉も湧く観光地の熱海にもまた、そうした人々が集まってきています。そんな中、2016年にオープンしたコワーキングスペース『naedoco(ナエドコ)』は、地域に根ざした新しい働き方の拠点として機能しています。
飲食店や干物店が軒を連ね、観光客でにぎわう目抜き通り、熱海銀座商店街。その中ほどの築60年のビルの2階に『naedoco』があります。中へ入ってみると天井の高い広々としたスペースが広がっていました。窓際に向かって置かれたデスクにはPCに向かって集中する人たち、島状に置かれたデスクにはミーティングで盛んに意見を交わす人たちがいます。
迎えてくれたのは、当初は複業として、7年ほど前から現在まで熱海のまちづくりに携わってきた三好明さん。今では移住して、『naedoco』を運営する株式会社machimoriの取締役を務める一方、自身の経験を生かして立ち上げた株式会社マチモリ不動産 の代表取締役を兼任しています。
「『naedoco』は株式会社machimoriの3つ目のプロジェクトとして生まれたスペースです。最近でこそ熱海が復活したと言われていますが、7〜8年前までは観光客の落ち込みが激しく、街は衰退の一途でした。熱海の中心部である熱海銀座商店街も閉店した店が多く、シャッター通りの様相。そんなまちを再生すべく、machimoriが最初に取り組んだのが、『CAFÉ RoCA(カフェロカ)』の開店(2011年)でした。
2017年にリニューアルオープンしたシェア店舗『RoCA』。現在は、『caffé bar QUARTO(カフェ・バール・クアルト)』とジェラート屋『La DOPPIETTA(ラ・ドッピエッタ)』が入居しています。
続いて取り組んだのが、空きビルの1階をリノベーションした『guest house MARUYA(ゲストハウスマルヤ)』の運営です。みんなが集まって食事をできる場所、熱海に興味を持った人が宿泊してゆっくり過ごせる場所を作ることができました。そして、次の段階として必要だと考えたのが、みんなが仕事をできる場所だったんです」と三好さん。
商店街の1階の店舗は借り手がいるものの、2階以上となるとまだまだ空き店舗が多かったこともあり、あえてビルの2階に『naedoco』をオープンしたとのこと。まちづくりに一緒に取り組んできた仲間たちと一緒に壁を塗ったり、家具を取り付けたり、ほぼDIYで内装を仕上げたそうです。中2階は元は喫茶店だったそうで、キッチンスペースも備わっています。
『naedoco』の中2階にあるキッチンスペース。
『naedoco』のリノベーションに協力した人たちからのメッセージが壁に書かれています。
会員たちのおすすめの書籍を陳列した書棚も。
一般会員の利用料は月額1万円(税抜)。24時間利用可能で高速無線LANやミーティングスペース(2時間まで)なども無料で使えます。また、金・土・日・祝日だけ使用するウィークエンド会員の利用料は月額5千円(税抜)。熱海に暮らす地元の人たちや移住者が個人利用しているほか、企業や地元イベントのミーティングスペースとしても活用されているとのこと。
「熱海でリモートワークをしている人や複業で頻繁に訪れる人に多く利用していただいています。起業したての方やこれからチャレンジされる方にとって最初から事務所を借りるのも大変ですからね。理想は、『naedoco』から事務所を借りたり展開したりする人が出たり、リモートワークの人が熱海のまち自体をオフィスのように活用したりして自由な働き方ができるようになることです。『naedoco』で仕事をして、息抜きに近くの喫茶店でコーヒーを飲む。熱海には色々なお店が密集していますし。気晴らしに散歩すれば知り合いに会って話が弾む。そんな風にまち全体を使いながら楽しく仕事をしてもらえればと思っています」と三好さん。
三好さんは自らが代表を務めるマチモリ不動産を通して、さらに熱海のまちでの新しい過ごし方を目指しています。
「熱海は空き家率が50%以上と全国でも最多です。しかし、従来の不動産市場では、リゾートマンションか築古のアパートくらいしか住居としての主たる選択肢がなかった。そこで、今まで賃貸の対象とされてこなかったビルの一室や空き家をリノベーションして、快適に過ごせる賃貸物件として貸し出す事業を始めました。その物件を契約した人は『naedoco』を使い放題にするセット貸しなど、地域の施設を複合的に活用してもらうことで、まちの使い方の新たな選択肢を提供したいと思っています。これからの時代、自分でワークスタイルやライフスタイルを選びとる人が増えてくるでしょう。私たちはそういう人たちを“クリエイティブな人”としてとらえています。そうした人々が思い切り働ける場所、楽しく暮らせる場所をこれからもっと作っていきたいですね」
移住しなくてもいい、深く関わり過ぎなくてもいい、自分の距離感で熱海のまちを楽しんでもらえればと三好さんは言います。
現在、コロナ禍の影響もあり、会員以外の利用は制限しているそうですが、事前に連絡をすれば、『naedoco』を見学できるとのこと。新しい働き方を探っている人、熱海に興味がある人は、一度、覗いてみてはいかがでしょうか?
naedoco
静岡県熱海市銀座町6-6 サトウ椿ビル 2F
℡0557-52-4345 (株式会社machimori・NPO法人atamista)
24時間利用可能
無休