ホテルから臨む駿河湾と富士山に毎日元気をもらっている ー 花井琴美さん
○花井琴美さん
静岡県島田市出身。県内の高校を卒業後、焼津グランドホテルに勤務。通勤は自宅から車で30分。レストラン勤務を経て、2018年からフロント業務を担当している。早番では朝6時、遅番では14時出勤というシフト制で、チェックアウト前の精算書類の作成や、チェックイン後の客室からの電話対応など、時間によってさまざまな業務が同時並行で発生する。
○株式会社中島屋ホテルズ
1916年(大正5年)創業。静岡県中部を中心に「人と人、人と社会の絆を強くして人生を豊かなものにする」を理念として事業を展開する。中島屋グランドホテル、焼津グランドホテル、ガーデンホテル静岡やレストランの運営のほか、2011年からは米国ニューヨークでのサービスアパートメント経営も始めている。
おいしい食事に広大な海。好きな旅行の要素が、ここに詰まっていた
子どものころから、「海を眺めて温泉に浸かり、おいしい食事を楽しむ」旅行が大好きだった花井さん。中でも、日常から離れて贅沢に過ごすホテルでの時間は、「ごくたまにしか行けないからこそ、いつも特別だった」と話す。
その特別な場所で働きたいと、県内の高校を卒業後、中島屋ホテルズに就職。焼津グランドホテルでのレストラン勤務、店長を経て、現在はフロントでお客様のチェックイン、チェックアウト業務を担当している。
「焼津グランドホテルは、穏やかな駿河湾と富士山を一望できる絶好のロケーションにあります。毎日、その景色を見られる職場というのはとても魅力的でした。実際に仕事で大変なことがあっても、広大な海や、富士山、夕焼けなど、豊かな自然を眺めているとまた頑張ろうと思えるんです。温泉や料理の質などの点でも、私が理想とする旅の要素を兼ね備えていて、ここで働きたい!という思いが強かったですね」
細やかなお声がけで、お客様の心を掴む
入社後は館内の全部署をローテーションで経験したのち、2年目からブッフェレストランでの接客業務を担当。宿泊のお客様はもちろん、ランチを楽しみに訪れるお客様とも信頼関係を築いていった。
「お客様が話してくださったことはできる限り覚えるようにしていました。好きな食べ物などさりげなく教えてくださったことでも覚えておけば、次にお会いした際に話すきっかけが生まれます。そして、『○○様がお好きな食材を使った、このお料理がおすすめです』と一言だけお伝えするんです。お客様一人ひとりを見ている、ということが伝われば、お客様も“歓迎されている”という気持ちになりますよね」
そんな細やかな気遣いから、お客様からは「花井さんに会いに来た」「焼津グランドホテルに花井さんがいないと寂しい」という言葉をもらうこともあったという。
「ちょっとしたやりとりでお客様が心地よく過ごせるようになれたら」。その思いは、2018年2月から担当しているフロント業務でも大切にしている。
「旅行に来る目的はさまざまですので、一人ひとりに合ったサービスを提供できるよう、お客様のお言葉にはしっかり耳を傾けます。例えば、チェックイン当日に『今日は誕生日なんです』と教えてくださったとします。すぐに、お部屋をご案内するゲストアテンダントのスタッフにインカムで共有し、案内する際に『本日はお誕生日おめでとうございます』と言ってもらうよう伝えます。レストランでのお食事では、メッセージ付きのデザートを用意し、写真を撮影。その写真をチェックアウトの際にお渡しします。一つひとつの行動はささやかなものですが、このホテルで過ごした時間が大切な思い出になるようお力添えすることが、私たちにできることなのかなと思っています」
静岡の豊かな自然、海の幸を堪能できる非日常空間
焼津グランドホテルには、駿河湾と富士山の絶景を楽しみたいという県外のお客様はもちろん、「温泉でゆっくり疲れをとりたい」という地元の方も多く訪れる。普段、身近にある風景の豊かさに改めて気づく。そんな魅力が、焼津グランドホテルにはあるという。
「雪はめったに降らず、あたたかくて、海は穏やか。ホテルのロビーやレストラン、部屋から見られる雄大な景色は、静岡のゆったりとした時間の流れを実感させてくれるんです。また、焼津の特産品・カツオの一番出汁や、駿河湾の桜えびなど新鮮な海の幸もたくさんあって、食からも静岡の豊かさを感じられます。スタッフは静岡出身の方がほとんどですが、気候のあたたかさと関係してか、あたたかくて優しい人たちばかり。そんなさまざまな要素が、ホテルのやわらかで過ごしやすい空気を作り出していると感じます」
休日には、東京や名古屋に足を運び、一泊の旅行を楽しむこともあるという。サービスを受ける側として勉強になることも多く、学びを実務に生かしたいと話す。
「フロントは、お客様がホテルのスタッフと顔を合わせて言葉を交わす、最初の場です。お客様が求めていることにもっと寄り添って、また来たいと思っていただけるようなサービスを提供していきたいです」