地元のものづくりを、見えないところから支える ー 園田令さん 大橋薫さん
○園田令さん
静岡県静岡市出身。県内の高校、大学を卒業後、新卒で株式会社三明に入社。産業電機営業部システム機器課に所属。
○大橋薫さん
静岡県静岡市出身。県内の高校を卒業後、東京の大学へ進学。Uターンして株式会社三明電子産業に入社。システム制御設計、回路設計を担当している。
○三明グループ
技術商社として、産業用電機品・ロボット・制御装置の開発販売、電気計装工事の設計・施工など、さまざまな領域の技術開発営業を手がける株式会社三明、メカニクスの三明機工、エレクトロニクスの三明電子産業の3社で「三明グループ」体制を確立。製品単体だけではなく、導入事例・用途事例と組み合わせたシステム技術提案やサポートまで対応している。
“ものづくりを支える裏方”のカッコよさに惹かれた
ものづくりを支えるロボットや制御装置、電機品などの担当営業として、お客様のニーズに合わせたシステム提案まで行っている園田さん。AI技術を搭載したロボットの開発など、グループ会社(三明機工、三明電子産業)の技術者とチームを組んで仕事に取り組んでいる。
企業ニーズを細かくヒアリングし、具体的なシステムに落とし込むため、技術者と打ち合わせを重ねる日々。お客様の事業理解、製品知識、エンジニア領域の知識など、幅広いインプットは欠かせないが、新卒入社当時はまったくのゼロベースだった。
就職活動時は「人と話すのが好きだから」という理由で営業職を志望していた。業界はとくに絞らず、三明の会社説明会にもふらっと足を運んでみた程度だった。しかし、そこで先輩社員の話を聞き、一気に心掴まれたという。
「先輩社員が突然『みんな今日500円玉持っている?』と話し始め、『その500円玉は、うちが作った装置でできているんだよ』と言ったんです。表からは見えない裏舞台で、地道にコツコツとものづくりを支える。かっこいい仕事だなぁ!と俄然興味が湧きました。僕も、三明に入って『いつも使っているその機械、うちの装置がなければできないんだよ』なんて、友達に言ってみたいと思いました(笑)」(園田)
入社後は、半年間の研修期間でじっくりと産業機械の知識をつけていった。三明機工、三明電子産業のグループ会社にも数カ月常駐。ものづくりの工程を学ぶほか、グループ内の交流を深めていった。現在は1年間の研修期間が設けられ、グループ3社にそれぞれ3〜4カ月常駐するため、グループ間連携はより強まっているという。
「研修期間中は、製造現場を見学させてもらったり、役員レベルの方が営業のロールプレイング研修に参加してお客様役になってくれたりと、教育体制の手厚さは今時珍しいくらい。研修後は1カ月間先輩の営業同行でOJTを重ね、その後は、先輩のお客様を引き継いでいよいよ営業がスタートします。最初は既存製品のやりとりが中心のお客様など、新人でも対応しやすい企業を担当し、少しずつステップアップしていていく。学ぶ環境はとても充実していると思います」(園田)
グループ会社の連携で乗り越えた新規のシステム提案
営業担当として扱うものには、既存の産業用部品など製品単体のものもあれば、お客様と相談しながらオーダーメイドシステムをゼロから設計するものもある。初めてシステム設計を担当した際は、何をヒアリングするべきか分からず、お客様からも技術者からも教わることばかりだったという。
「携わったのは、AI技術を使い、必要な部品を判別して特定の場所に運ぶというロボットのシステム開発でした。お客様からのニーズを、三明機工のシステム設計エンジニアの方に伝えると『それだけの情報では設計できない』と突っ込まれ、またヒアリングに行く…その繰り返しでした(笑)。お客様のもとに一緒に説明に行くこともあり、不備があればきちんと叱っていただいて…。グループ会社の連携があったからこそ、何とかシステムを無事完成まで持っていくことができました」(園田)
無事納品できたときは、あまりの達成感に泣きそうになったと話す園田さん。チームを組んでプロジェクトを推進することで、技術者との信頼関係も深まり、相談できることも増えるという。
「お客様からは、AIを使って業務改善したい、など漠然とした課題を投げかけられることがあります。まずは、AIで何ができるのかを僕自身が理解しなければ、お客様の業務のどこにAIを入れると一番効率的なのかも分かりません。三明グループの技術者の方にも話を聞きに行き、どんな情報が必要なのかを教えてもらうことで、打開策が見えてくることもたくさんありました」(園田)
また、商品や技術の知識をつけるには、お客様先に足を運んでコミュニケーションを重ね、さまざまな課題に耳を傾けることが大事だという。
「あの案件で似たようなニーズがあったな…という感覚は、現場経験でしか得られません。お客様とは普段からこまめにコミュニケーションをとり、具体的な案件がなくても、困ったことを相談していただけるような関係性を築いています」(園田)
設計から納品まで一気通貫で担当。プログラム通りに動いた感動をチームで共有
「グループ会社の三明機工と担当した案件では、中国の工場に約6週間滞在し、納品した大規模ロボットがプログラム通り正確に動くかのチェックを担当しました。テニスコート3面分くらいのロボットなので動作確認にも時間を要します。不具合にもすべて対応し、思い描いた通りに機械が動いたときがエンジニア冥利に尽きる瞬間。設計に携わった案件は、現地で実際に動くところまでを見届けられるので、喜びも大きいです」(大橋)
案件は、毎回違う業界で、毎回違う仕様。いちから設計しなくてはいけない大変さがあるものの「ものづくりをやりたい」と三明電子産業に入社した大橋さんにとっては、やりがいにつながっているという。
「チームを組むエンジニアの先輩やグループ会社の営業とは、お客様のニーズをテクノロジーでどう実現するかを徹底的に議論します。そのプロセスも面白いですし、実際にロボットが動いて、プロジェクトメンバーと喜びを共有できるのもうれしい。そして何より、お客様から直接感謝の言葉をいただいたときには、それまでの苦労が吹き飛びますね」(大橋)
自動車から製紙業界まで、静岡の立地だからできる多業界との取引
三明が幅広い業界を担当して成長を続けている理由の一つに、静岡市という立地がある。東西に広い静岡県内には、西は自動車産業、東は医療や製紙業界などと、あらゆる業態があるが、静岡市はその中心に位置するため、あらゆる業界との取引がしやすいのだという。
「取引の多い業態が絞られていると、その業界の好不調の波や、ビジネス規模の縮小による影響力は甚大です。でも、三明は幅広い業界と取引しているからこそ、どこかと共倒れすることがない。営業の担当業界もバラバラで、一つの業界に凝り固まらない応用力のある人材を育てようという風土があります」(園田)
現在、業界問わず30社の企業を担当している園田さん。県民性なのか、営業電話をかけるととりあえず会ってくれる企業の方が多く「営業に優しい県」だと笑う。
「三明には、地元企業に製品を納品することで、ものが作られ、“みんなの見えないところで地元を支えている”という自負がある。そんなところにも、共感してくださっているのかもしれません」(園田)
長く仕事をする上でも、“このためなら頑張れる”と思えるものが大事だと園田さんはいう。
「好きなことを仕事にするのはハードルが高いかもしれない。でも、その仕事の中に好きなこと、楽しいことを見つけることはできます。これから自分の道を選んでいく10代の皆さんにも、少しでも面白いと思えるものに出会ってほしいなと思いますね」(園田)