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働く若者紹介

「好きなことと好きな場所」で行き着いた、理想の環境 ー 雪島知佳さん

○ 雪島知佳さん

静岡県浜松市出身。関西の大学を卒業後、2017年に有限会社春華堂に入社。nicoeでの店舗配属を経て、2018年4月から経営管理室へ。瀬戸内寂聴さんと春華堂の共同開発商品「しあわせクッキー」プロジェクトの企画推進を担当。

 

○ 有限会社春華堂

静岡を代表するお菓子「うなぎパイ」のほか、和菓子、洋菓子を幅広く製造・販売する老舗菓子屋。1887年(明治20年)に創業し、1961年に「うなぎパイ」が発売された。創業以来の「三惚れ主義」(土地に惚れること。商売に惚れること。家内に惚れること)を受け継ぎ、菓子を通じて浜松の地に貢献し、地域への恩返しをするという考え方を大切にしている。

 

 

「3時のおやつ」を大事にする、独自のカルチャーに惹かれて入社

 

「食べることが好き!」というシンプルな思いで、進む道を選んできたと話す雪島さん。大学では管理栄養士の資格を取るため、勉学に励んだ。独自の食文化がある関西圏に住んでみたいというのも、大学選びの一つの基準だった。

「関西は、常に笑いを求める独特のカルチャーなど面白いところがたくさんあって刺激に満ちていました。一方、地元を離れたからこそ気づいた、静岡の魅力もたくさんあって。人が穏やかで優しくて、何より、海の幸にも山の幸にも恵まれて、おいしいものがたくさんある。最後に帰りたい場所はここだな、という思いが、在学中にどんどん明確になっていきました」

 

就職先を選ぶ際も「静岡で働く」という軸ははっきりしていた。管理栄養士の資格を取得していたため、病院や学校施設などのメニュー管理・指導といった仕事の選択肢もあったが、強く持っていたのは「大好きなお菓子作りに携わりたい」という思い。地元・浜松のお菓子メーカー「春華堂」は、理想の会社だったという。

「春華堂には、『菓子屋として、3時のおやつの時間を大事にしよう』というカルチャーがあります。毎日その時間になると、オフィスでお茶を入れるんです。それを会社説明会の際に知り、なんて素敵な会社なんだろう!と感動(笑)。実際に入社すると、浜北工場で作られている商品の甘い香りが、同じ社屋にあるオフィスにも漂ってくる。そんな日常にいちいち幸せを感じます。また、社員は浜松出身者が多く、社内ですれ違うと必ず声をかけてくれるアットホームさがあります。そのあたたかさも静岡らしくて、過ごしやすいですね」

 

 

瀬戸内寂聴さんのメッセージを届ける新商品の企画担当“企画女子”に抜擢

 

入社後は、直営店舗「nicoe(ニコエ)」で販売業務を1年間担当し、2年目から、役員直下部門の経営管理室に異動。現在は、作家・瀬戸内寂聴さんと春華堂のコラボレーション商品「しあわせクッキー」を企画する“企画女子”に抜擢され、商品開発からパッケージデザイン製作、プロモーション施策の立案まで任されている。

「『しあわせクッキー』は、若い人たちに生きるメッセージを伝えていきたいという寂聴さんの思いから始まった商品開発プロジェクトです。もともと、寂聴さんが開いていたイベントに春華堂が協賛したことからつながりが生まれ、2018年5月に企画が動き始めました。当時の私は、経営管理室に異動したてで、仕事の仕方がまったく分からない状態。先輩について、寂聴さんと、秘書の瀬尾まなほさんとの月1回の打ち合わせに参加し、やるべきことを一つひとつ覚えていきました」

 

打ち合わせの前には、寂聴さんの法話を聴く機会が毎月あり、その話に雪島さん自身が救われたり、「仕事を頑張ろう」と前向きになれたこともあったという。寂聴さんの言葉一つひとつを、多くの人に届けたい!という思いが、商品作りにも反映されていった。

「『しあわせクッキー』には、個包装された12枚のクッキーが入っています。その包装には、寂聴さんの12の言葉がそれぞれプリントされているんです。1種類ずつ別々のフィルムで巻かなくてはいけないので、製造部門からするととても大変な工程。それでも、一つひとつのメッセージを読んでクッキーを味わってほしい、という思いを工場のメンバーと共有しながら形にしていきました」

 

2019年2月から販売開始となる「しあわせクッキー」。本の形をしたボックスにもこだわりがあり、書店での展開を進めるなど、新たなプロモーション施策も進めているという。

「小説家である寂聴さんらしいデザインを…と、パッケージデザインの修正を何度も重ねて完成させました。春華堂の商品が書店に並ぶのは初めての試みですが、新しいことにもどんどん挑戦できる春華堂の風土があるから、アイデアや行動力が生まれる。責任もありますが、やりがいも大きいですね」

 

 

プライベートの充実が、いい仕事を生み出していく

 

経営管理室に異動してから、職場の近くで一人暮らしを始めた雪島さん。車で10分の場所にあり通勤の負担がないこと、自分の空間を持てることが魅力だったという。

「学生時代に一人暮らしをしていて、その気楽さも好きだったんです。しかも、実家は車で30分の距離にあるので、仕事の相談事や報告したいことがあればすぐに帰れます。『おいしいご飯が食べたくなった』と立ち寄ることもありますし(笑)、いい距離感が心地いいですね」

浜松という土地や、あたたかい人柄が好き。そして何よりお菓子が大好き。その純粋な視点で働く環境、住む場所を選んだから、仕事を楽しめている今がある。

「『しあわせクッキー』プロジェクトに携わったことで、改めて、お菓子を一つ作るのに、何十人もの人が関わっているのだと実感しました。いいものを作りたい、という社員一人ひとりの思いもとても強く、何度も試作を重ねて、ようやく商品ができていく。そういった職人肌なところも“お菓子が好き”という情熱があるからできるんだと思います」

 

大切にしているのは、寂聴さんからもらったある言葉だ。

「仕事でできないことが多くて悩んでいたとき、『恋をしたりプライベートで楽しい時間を過ごしたりしている?』と聞かれたんです。仕事だけでいっぱいいっぱいになって、視野が狭くなっていた私を、はっとさせてくれた言葉でした。そこから、プライベートも充実していれば人としての魅力が増して、魅力的な仕事がついてくると考えるように。自分の好きなものやことを求めて動いていけば、いい仕事もできるようになるんじゃないかなと思っています」