リーグ昇格を目指して。女子ラグビー選手が働きながら静岡を盛り上げる
○冨樫香子さん
神奈川県横浜市出身、静岡県掛川市在住。高校では吹奏楽部、大学への入学をきっかけに大学の体育会ラグビー部と都内のクラブチーム「世田谷レディース」でラグビーを始める。大学を卒業後、一度ラグビーから離れ、映像制作会社に勤務するが、諦めきれず2019年にアザレア・セブンのトライアウトを受け合格。現在は、一般社団法人アザレア・スポーツクラブの広報・渉外担当として働きながら、アザレア・セブンの選手として活躍している。
○一般社団法人アザレア・スポーツクラブ
「女性と子ども」に特化した総合型地域スポーツクラブ。1stプロジェクトとして、小笠山総合運動公園(エコパ)を拠点とした女子7人制ラグビーチーム「アザレア・セブン」を2019年に発足。
○山本みなみさん
北海道音更町出身、静岡県掛川市在住。東京の大学在学中に、都内のクラブチーム「世田谷レディース」に所属しラグビーを始める。大学4年時からアザレア・セブンに所属。2020年に鈴与株式会社に入社し、仕事とラグビーを両立している。
○鈴与株式会社
静岡県をベースに国内約140拠点、海外15ヶ国で事業を展開する、総合物流会社。物流のほか、商流・建設・食品・情報通信・航空など約140社のグループ会社がある。アザレア・スポーツクラブのGold Partner。
◆エコパは恵まれた環境
「一般社団法人アザレア・スポーツクラブ」で広報の仕事をしながら、業務終了後はアザレア・セブンでラグビーに打ち込む冨樫香子さん。アザレア・スポーツクラブでの仕事は多岐にわたる。
「アザレア・セブンやアザレア・スポーツクラブのメディア対応、SNSやHPの運用、サポーターズクラブの管理。広報誌『アザレアビジョン』の企画・制作などをしています。最近はオンラインショップを自ら立ち上げ、グッズ販売も始めました。アザレア・スポーツクラブは、まだ発足して間もないスポーツクラブです。誰かに教えてもらうのではなく、自分でトライアルアンドエラーを繰り返して仕事を進めています」
2018年11月に発足したアザレア・スポーツクラブは、一般的なスポーツクラブではない。女性と子どもを主役にしたチームだ。
「アザレア・スポーツクラブは、女性と子供に特化したスポーツクラブです。地域の人に愛されるスポーツクラブになろうと、2019年に1stプロジェクトとして女子7人制ラグビーチーム『アザレア・セブン』を立ち上げました。拠点は袋井市と掛川市にまたがる小笠山総合運動公園(エコパ)。スタジアムやアリーナがあり、天然芝・人工芝のグラウンドが5面あります。全国レベルの環境だと思います。こんなに恵まれた環境で練習ができるラグビーチームも珍しいです」
◆静岡で仕事とスポーツを両立
そんなアザレア・セブンでラグビー選手として活躍する傍ら、鈴与株式会社で働いているのが山本みなみさん。大自然豊かな北海道音更町で生まれ育ち、東京の大学へ進学。2015年のラグビーワールドカップで観た、五郎丸選手のキックの正確さやスクラム、長距離のパスに感動し、ラグビーに興味を持った。そこから、「世田谷レディース」でラグビーの基礎を学び始める。そんな時に、アザレア・セブンの存在を知った。
「大学4年生の頃に、アザレア・セブンのトライアウトを受けて合格しました。一期生として入団し、今に至ります。入団当初は、毎週末、東京から静岡まで新幹線で通っていました。静岡での練習やチームメイトに会えることが毎週楽しみで、大学とスポーツチームの両立は全く苦ではありませんでした」
大学卒業後は、鈴与株式会社に入社。昼間は袋井のオフィスで営業事務の業務を行い、終業後はエコパで練習をしている。
「まだ入社して日が浅く、今は自分の仕事に慣れることが精一杯。会社では事務業務を担当しています。経理業務で請求書を発行したり、電話対応、お客様対応でメールを出したり、郵便を出したりしています。業務終了後は、エコパに移動して練習。仕事場から車で10分の距離で行けるので、移動時間も少なく助かっています」
このように仕事とスポーツを両立するのは簡単ではない。「周りのサポートが大きい」と山本さん。
「仕事をしながらラグビーができる環境に感謝しています。業務が時間内に終わりそうにない時は、助けていただくこともあります。モチベーションをいつも保てているのは、周りのサポートがあるからです。会社の人からの頑張ってねという言葉に背中を押されています。逆に、仕事が充実していないと、両立していくのは難しいと思います」
◆北海道と静岡はどこか雰囲気が似ている
大学時代をいれれば、静岡と関わりを持って1年が経過した。昔を思い出しながら、「北海道と静岡は似ているところがある」と山本さん。
「自然豊かな場所で育ったこともあり、東京の満員電車や人混みが苦手でした。将来は自然豊かなところに住みたい、そう思っていたときにアザレア・セブンに出会いました。静岡に来るようになって、北海道と似ている部分が多いなと感じます。魚が美味しくて、山や海がある。まるで地元に住んでいるかのようです」
また、「地元感」を感じるのは食べ物や自然だけではない。
「県外から来た私を、疎外感なく受け入れてもらっていると思います。心が広くて優しい人が多いです。もしかしたら、方言が関係しているのかもしれません。静岡の方言で、語尾に『さ』をつけることがありますが、北海道にも同じ表現がある。聞いていても違和感がなく、元々方言が強くない地域ということもあり、静岡の方言は習得しやすいと思います」
「方言がわからないときは、チームメイトに教えてもらっています」と山本さん。方言を教えてもらうのも、コミュニケーションの1つになっているようだ。アザレア・セブンのチームメイトは、みんながムードメーカー。練習に真剣に取り組むが、持ち前の明るさは失わない。チームメイトとは、誕生日をお祝いしたり、休日には公園で練習したりすることも。
「エコパスタジアムの練習環境が整っているのはもちろん、静岡には広い公園がたくさんあります。休日にキックの練習を公園でできるのも、静岡のいいところですね」
そんなチームメイト達と目指すのは、1部リーグに上がること。道のりは簡単ではないが、アザレア・セブンならいつか1部リーグでプレーする目標を達成し、静岡のラグビー界を盛り上げてくれるでしょう。