【静岡市・Iターン】古川未帆さん
愛知県豊川市出身。しずてつジャストライン株式会社 総務部人材支援課所属。静岡大学人文社会科学部を卒業後、2016年4月静岡鉄道株式会社に入社。
同年5月にグループ会社であるしずてつジャストラインに人事交流となり、2017年4月より現部署。
静岡市へのIターンを決めた理由
「静岡大学に進学し、静岡のために働きたいと思うようになった」
高校を卒業後、地元・愛知県豊川市を離れて静岡大学に進学した古川さん。「大学生の一人暮らし」への憧れから地元を離れたものの、就職するときにまた戻ってこようと考えていた。「隣接する県なら実家にも帰りやすいし」と、静岡県を選んだという。しかし、大学時代に出会った人とのつながりが、古川さんの価値観を一変させることになる。「今となっては、静岡への思いは、地元・愛知への思い以上に強いかもしれない」と笑う。
「大学生活は順風満帆だったわけではなく、大学入学当初はホームシックになり『地元を離れなければよかった』とぐずぐずしていました(笑)。その後2年生の終わりまで、家と大学と居酒屋のアルバイトを行き来しているような毎日で、『このまま学生生活を終えていいのだろうか』と悶々としていました。そんなときに、同じ学科の先輩から、「古川ヒマでしょ?面白い活動があるから来てみなよ」と誘われたんです。『I Love しずおか協議会』という、静岡市中心市街地“おまち”の活性化を推進する団体が学生向けに行っているインターンシップでした。そこでは、静岡の企業に勤める社会人や、静岡の大学に通う学生が集まり、静岡のおまちを活性化するための「しずおか“おまち”サンタフェスティバル」の企画・運営を行っていました。インターンシップに参加してみると、周りのみんなの『静岡をよくしたい』という思いの強さ、行動力に驚かされました。また、それまでは自分と似た価値観の家族・親戚・友人とか関わってこなかったのですが、I Love しずおか協議会のインターンシップを通して多様な価値観に触れ、新しいヒト・モノ・コトに出会うってなんて楽しいんだろうと思うように。その後、高校生に自分のキャリアを考えてもらうためのワークショップのお手伝いをしたり、地元の身近な社会課題について語り合う場の運営をしたりと、活動の幅を広げていき、静岡という土地にどんどん愛着がわいていきました」
他大学の学生や、地元企業につとめる社会人の方とのつながりも生まれ「自分が静岡のためにできることは何だろう」と考えるようになっていったという古川さん。就職活動が始まるころには、地元・愛知県に戻る選択肢はなくなっていた。
「地元に残っていた兄が結婚し、『親のことは心配しなくていいよ』と言ってくれたので、親不孝とは思いながらも『私は私の好きに生きていこう』と思いました。就活では静岡か東京に絞って企業を回りましたが、東京の人の多さに圧倒され、毎日通勤するイメージがなかなかわかなくて…。就活中に一時的とはいえ東京に身を置き、静岡を離れたことで『学生時代に出会ったヒト・モノ・コトとのご縁を、社会人になっても大切にしていきたい。もっと静岡のためにできることがあるはず』と思っている自分に気づいたんです。そして、せっかく静岡で就職するなら、地元にとってなくてはならない会社に行こうと、静岡鉄道へ入社。鉄道、不動産、流通など多角的に事業展開していて、いろんな領域から静岡を見られる、支えられる、元気にできる点にも魅力を感じました。静岡鉄道は『I Love しずおか協議会』の正会員のため、学生時代から社員の方と話すことが多く、あたたかくていい人たちばかりだなと常々思っていました。こんな人たちと働きたいと、入社後のイメージがついたのも、この会社を選んだ理由の一つでした」
Iターンを決めたときの周囲の反応
「地元・愛知も東京も1時間で行ける好立地がうれしい」
静岡に残る決断は、家族にも事後報告だったという古川さん。「静岡鉄道に内定をもらったから、ずっとこっち(静岡市)に住むことにした」と結論を伝え、両親を驚かせた。
「静岡大学に進学するときも『本当に県外に出るの?』とびっくりしていましたが、内定の報告には『こっちに戻ってくるんじゃなかったっけ?!』としばし唖然(笑)。でも、子どものころから私の意思を尊重してくれる親だったので、最終的には『あなたが決めたことなら頑張りなさい』と背中を押してくれました。親元を離れたといっても、実家まで約1時間なので、帰ろうと思えばすぐに帰れる物理的な近さは安心感につながっています。東京までも1時間で行けるので、新しい刺激を求めたかったらすぐに出かけられる。静岡市はとても住みやすい、ちょうどよい位置にありますね」
現在、静岡鉄道に入社し3年目。静岡県中西部地区の路線バス、高速バスなどを担うグループ会社・しずてつジャストラインに人事交流し、2017年からは新卒・中途採用を担当している。静鉄グループが運行する電車もバスも、地域の方々にとってはなくてはならないもの。人々の生活に“当たり前にあるもの”を支えているという思いが、古川さんの仕事の原動力になっている。
また、年間通して暖かく、過ごしやすい気候も、静岡に住む魅力の一つだ。
「地元では、冬になると雪が降ることもあったので、静岡の雪が降らない・積もらないほどの暖かさには驚きました。“雪が降らない”ということは、公共交通機関を担う事業者にとっては、『積雪の為運行中止』とならないので、すばらしいメリットなんです。また個人的には、寒がりなので過ごしやすくて助かっています(笑)」
Iターンを考えている人へのアドバイス
「社会人との接点を多く持ち、多様な価値観に触れてほしい」
自身がIターン経験者だからこそ、採用担当として、UIターンに悩む学生に、実体験に基づいた話もしている。
「静岡って住みやすいなと思うことが多いので、私が感じているままを伝えています。例えば、静岡は自然も多くのんびりとしていますが、東京、横浜、名古屋といった大都市圏にも1時間程度で行けるというアクセスのよさ。また、静岡市に関していえば、街がコンパクトで、病院からショッピングモールまで必要なものはすべて身近なところにそろっているのも便利です。静岡の魅力ならいくらでも話せるので、UIターンのメリットしか伝えていないかも(笑)。Iターンで悩んでいる学生の中には、地元の親に『戻って来なさい』と言われているケースもあるので、私が親に自分の将来をどう伝えたのか、といった話もします」
今後も、「静岡で頑張っている人の力になりたいから」静岡に住み続けると話す古川さん。休日には、学生時代からの延長で、静岡の地域活性に関わる活動を行い、「ハード面は仕事で、ソフト面は外部活動で、静岡を若者が住み続けたくなる街に!」と奔走している。そこまで静岡のことを思う原点は、大学時代に出会った人たちにある。
「静岡をよりよくしていきたいと全力を注ぐ学生や社会人の仲間に出会い、これからもこの人たちと一緒に静岡をもっともっと元気にしていきたい、私もこの人たちの力になりたいと思ったんです。これから進路を決めていく学生の皆さんには、学生時代から自分のコミュニティの殻を破り、いろんな人に会って、たくさん話しておくことをお勧めします。人の多様な価値観に触れることで、自分が思ってもいなかった道に進むこともある。その選択肢は広く持っておいてほしいと思います」